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「チケットがなくても、一人であっても、その場の空気が楽しめる。その場に居合わせた人が一つになれる。それが大道芸の魅力」と語る「ミスター・アパッチ」。日本の大道芸の第一人者が26日、旭川歩行者天国で楽しい芸を演じていた▼ミニ自転車やジャグリングなど、各種小道具を使っての演技は超一流だ。鍛えた身体、厳しい練習の末に会得した高度なワザ。ジャグリング、ハシゴを使っての「けん玉」など、何の仕掛けもない、卓越した技術から産み出される数々の芸は見事だ▼「出会ったこともない人の足を止め、気持を引きつけることは大変なこと。始めは誰も居なくても、気がつけ多くの人が集まってくれる、そんな芸を演じたい」と言う彼は、話術も素晴らしい。演じる彼の周囲には見る見る人垣が出来、小さな子供は父親に肩車されて見ていた▼確かに、見る人の足を引き留める魅力が、彼の芸にはあった。彼が言うように、チケットも要らないし、自由に見物出来るのだから、背を向けるのも自由だ。彼の目指すのは「最後まで帰さない芸」だ。観客はただ見ているだけでなく、拍手をし、歓声をあげ、知らない同士が肩をたたき合い、辺りはとても賑やかになっていた▼少年時代から自転車など各種大会に優勝し、上海雑伎団に留学。日々の練習が技術を磨いた。彼はこう語る。「人は色んなものを背負っている。でも、私の芸を見ている時は、背負っている荷物を降ろしているのではないだろうか」と。激しい鍛錬あればこそ、笑いと拍手を得ることが出来る。大道芸ならではの凄(すご)さとの切れ味を感じた。