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「GNP」は国民総生産。では「GNH」とは何?。訳して国民総幸福量。これはヒマラヤ山脈の東、インドとチベットの間にある「ブータン」という国が一番大切にしている目標である。現国王が経済成長より、国民の幸福感こそ重要>と30数年に渡り、ブレずに続けて来た政策である▼その思想の根幹は「幸せとは、ある程度の消費欲と、精神的満足感とのバランス」だと言う。家族や地域社会の自然環境、伝統的文化を犠牲にするような国は、人間が住む国ではない│という考え方で、徹底した国作りをしてきた▼日本の九州程の面積に人口約70万人。自然環境と有形無形の文化財を大切にする国民性が、世界から観光客を呼んでいる。観光産業の伸びが、国民のある程度の消費欲≠満たし、美しい国を愛する精神的な満足感とで、2005年の国勢調査では97パーセントの国民が「幸せだ」と感じている▼国民は自国のリーダーを「非凡な常識を持つ人」と表現する。リーダーは「成長が目的ではなく、幸福追求への手段」と明言する。国民は多くを望まず、自然と共に生き、相変わらず自給自足を基本にしている。ブータンに来た観光客は、そこに国境を超越した故郷を感じるという▼日本は、ブータンのような国家運営は出来ないが、参考にする面はあるだろう。ブレない政治、幸福を追求する政治、そして国民は今までのような高度成長経済の中での、物質的な満足感に別れを告げなければならない。それは今回の震災で殆んどの日本人が感じたことだ。物質の、何と儚(はかない)ことか。最後に残るのが心の豊かさであることを。