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デスク記事

2011/08/12

 "紳士の国<Cギリスが混乱している。首都ロンドン始め各地で暴動が起こり、治安が悪化している。キャメロン政権が「柱」にしている緊縮財政政策は、連鎖的に国内の失業者を増やし、特に若者が職に就けず、20パーセントを越える失業者を出した▼暴動のきっかけは、犯罪容疑のある黒人男性を、警官が射殺したこと。それが引き金になり、若者などの不満が一気に爆発し、放火、略奪などの行為に拡大した。来年のロンドン五輪を前に、イギリスは試練の時を迎えている▼イギリスは「紳士の国」と呼ばれているが、今回の暴動はそのイメージを覆(くつがえ)した。商品の略奪、放火、外国企業への襲撃など、いくら体制への不満と言っても、既に政治的抗議行動の側面は失われ政治運動≠隠れ蓑(みの)にした暴徒の集団である▼第二次大戦後「ゆりかごから墓場まで」と福祉国家を目指したが、1960年代は「イギリス病」と言われる不景気に直面した。名高いサッチャー首相の下で急進的構造改革を断行し、金融は栄えたが、反面失業者が増え、地方が衰退した。1990年代はブレア首相の市場化政策で景気が回復したが、最近は再び経済が悪化、現キャメロン政権が大規模な緊縮財政に踏み切った▼イギリスの国民性は自己主張の強さ≠ニされている。15世紀以降、世界に植民地を持ったが、第二次世界大戦後大部分の植民地を失なった。その結果多民族国家の姿を残した。それが昨今の大規模な暴動にも繋がっている。自己主張が、こんな形で表れているとしたら、不幸なことである。