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デスク記事

2011/08/13

 とんぼつり 今日はどこまで行ったやら
 江戸中期の女流俳人・加賀の千代女の作である。彼女は一人息子を幼くして亡くしている。季節は秋。あの子は今日も天国でトンボを追っているのだろうか≠ニいう思いが込められている▼トンボという昆虫は、どこか悲しげである。あんなに群れで飛んでいても、何故か一匹ずつ、みんな孤独に見える。私は5歳の時、長野県の岡谷市に住んでいた。7歳の姉と留守番をする日々だったが、姉は私をよく麦畑に連れて行ってくれ、赤トンボをとってくれた▼姉は片手を高く上げ、指を立ててしばらくすると、赤トンボがその指先にとまり「すぐ逃がしてあげるのよ」と言い、私を見て微笑んだ。その姉は翌年、急性肺炎であっけなく死去した▼お盆が過ぎると、トンボの季節がやってくる。以前は紋別にも多くのトンボが飛んでいて、時には羽音をたてながら群れを成していた。現在のイオンのある周辺は、氷池だった場所。多くのトンボが集まってきた。ギンヤンマやシオカラトンボ、アキアカネなど種類も多く、ガキ共の恰好の遊び場だった▼駅裏の水たまりや道路ワキを走る下水など、至る所をトンボは飛んでいた。当時、花園町にあった私の家の前の山川さんの庭に池があった。近所の子供達が集まってきて、トンボの幼虫のヤゴや、ゲンゴロウをとって騒いでいた。紋別も、今は以前のように多くのトンボを見ることは出来ない。しかし赤トンボや色々な昆虫に、遠い昔の思い出に重ねる人は多いだろう。昆虫はみんなの遊び友達だった。