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デスク記事

2011/09/03

 アメリカは2001年9月11日の同時多発テロ、日本は1995年の地下鉄サリン事件から見えない敵≠ニの戦いに神経を尖らすこととなった。アメリカへの入国審査は特に厳しい。税関を通る時は鋭い視線で見つめられ、警戒感に満ちた質問がなされる。私はシアトル空港で一度、要警戒人物として再三の取り調べを受けた。あとで分かったことだが、1週間前にインドネシアに滞在したことがパスポートに記されていた▼インドネシアはイスラムの国。職員は私のスーツケースはもとより、手荷物、服装検査を徹底して行った。厳しい口調で質問もされた。結果、当然のことながら何も出てこなかったが、税関職員は「通って良し」と言っただけ。笑顔もなかった。かつての「アメリカへようこそ」の明るい空気は、今はない▼日本も、地方の田舎道にさえ「テロ警戒中」の看板が立つ。空港などでは「疑わしい人、物を見つけたらすぐ通報を」の張り紙が至る所に見られる。どんな手口で、どこで発生するか分からないテロ行為。未然防止には絶え間ない警戒が必要だ。その反面、社会全体から明るさが消えた。疑いの目が光っているからだ▼日本では、見えない敵がさらに加わった。放射能汚染という、全く目に見えない相手だ。普段と変わらない緑豊かな風景、静かな川のせせらぎ、ポッカリ浮かぶ白い雲。爽やかな風が頬(ほほ)をなでても、放射線は人体を蝕(むしば)む。これから数十年に渡り、日本人は今回の原発事故と付き合って行かなければならない。9月1日は防災の日である。