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デスク記事

2011/09/22

 「旗のように侍(さむらい)は、嵐の中翻(ひるがえ)る。
 苦しいときもさわやかに、悲しいときも美しく
 名のみ憎しむ我なれど、哀れは誰も変わりなし
 風のように侍は、大地の上を吹きすぎる」
 日本の映画史に輝く「七人の侍」の主題歌である▼老後を静かに過ごそうと思っていた、軍師・島田勘兵衛を中心に、7人の侍は野武士に荒らされる貧しい集落を助けるため立ち上がる。トランペットのテーマ曲は、勇壮で気高く、孤高の響きをもって人々の心に染み渡る。7人の侍は、それぞれの個性を発揮して、遂に村を救う▼アラスカの最北端のマチ・バローのクジラ漁は、数千年前から何も変わっていない。アザラシの皮を張って作った手製のボート(ウミアック)に10人程が乗り込み、氷の割れ目に出現するクジラを追いつめる。経験豊かなお年寄りが操船の号令をかけ、それに合わせて若者が櫨(ろ)を漕ぐ▼年長者と若い人の絶妙のハーモニーでクジラに近づき、若者が銛(もり)を打ち込み、捕獲する。1頭獲れれば村人の冬の蛋白源は充分。村中が喜びに包まれる。次元を異にするが、7人の侍も、バローのクジラ漁も、年長者と若者、個性の異なった人たちの調和で物事を成功に導く▼総務省の統計で、65歳以上の人口が過去最高の2480万人以上となった。日本人の約5人に1人は高齢者である。しかし現在の高齢者は元気。若い人に協力し、社会に調和をもたらす役目がある。敬老の日とは、そういう自覚を持つためにあるのではないだろうか。