デスク記事
−地はひとつ大白蓮の花と見ぬ雪のなかより日ののぼる時−
明治から昭和にかけて活躍した与謝野晶子の「夢の華」の中の歌である。
雪の日、静かに登ってくる太陽は、まさに白蓮の花のような荘厳な美しさがある│というもの。与謝野晶子の作品には、どこか自分の姿を重ねる部分があるようで、この句も太陽と白蓮を自分に置き換えていたのだろうか▼晩秋、オホーツク海から昇る太陽は、まさに白蓮の花に例える荘厳さだ。ホタテ漁船の一斉出漁と共に、太陽は午前5時25分頃に昇ってくる。周辺の雲が一段と輝きを増したころ、朱色の太陽が頭を出し、グングン上昇してくる。強い輝きと圧倒的な存在感は、いつ見ても力強く、エネルギッシュだ▼ホタテ船が太陽に向かうように、エンジンの音を響かせながら漁場を目指す。太陽と海、そして漁船。シンプルな組み合わせだが、それまでの暗闇に光が射し、周囲が色づき、その輝く海に出漁する漁船の姿は、見る者の心を震わせる▼写真を趣味にする人たちが、撮影ポイントである海岸線、紋別公園などの高台でカメラを構える。そんな時の会話は「今日は水平線上に雲がない。昇る瞬間から見られるネ」「ホタテ船が日の出と共に出漁してくれた。タイミングがいいぞ」と、少年のようだ▼この光景を与謝野晶子なら、どう表現するだろう。彼女も早朝の光景に魅力を感じ、もしかしたら毎朝海岸線に姿を見せるかも知れない。そんなことを想像しながら、楽しくシャッターを押している。