デスク記事
高速で走っていた車に急ブレーキをかければ、車内の人には相当の負担がかかる。今の日本の状況に似ている。世界的な経済不況は、今後さらに日本経済に影響を与える。東日本大震災と原発事故が追い打ちをかけ、日本全体に急ブレーキがかかった▼円高、増税、社会保障の後退、所得の削減、物価高。これらは今後さらに国民の生活を窮地に追いつめる。成長路線に乗って、まあまあの生活を続けてきた日本人全体にとって、戦後初めて経験し、今後も持続する圧迫感であろう▼こんな時代だからこそ、物事に対する広範な思考が必要だ。昨今の日本は、集団的ヒステリー現象に陥ってはいないだろうか。世の中には不合理が数多くある。しかし不合理の蔭にはいびつな合理≠烽るのだ。全てをなくすには、それに向かう時間も必要である▼公務員宿舎建設問題が国民的な関心を集め「凍結ではなく中止を」「宿舎は廃止し、家賃補助で」など、一挙に最終的な方向への論調が高まる。それは正しいことかも知れない。しかし時間的な経緯の中で生まれた必要悪は、なくすためには時間も必要なのだ。今後の国民的な課題にしながら、良い方向へ向けるべきだ▼公務員宿舎に代表されるように、市民生活が圧迫されると我が身を中心にして世の中を考える傾向になる。しかし社会はどこを切っても金太郎アメ≠ノはならない。切磋琢磨(せっさたくま)の中から人類の発展も文化も生まれた。必要なのは不合理を少しずつ修正しほぼ納得≠フ社会を構築することだ。その判断基準に自己を置く時は「冷静な視点」が不可欠だ。