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デスク記事

2011/10/14

 紋別市が市の木にしている「ナナカマド」が、鮮やかに紅葉し始めた。赤い実と共に、秋の色を象徴する木で、これから初冬にかけて、葉が落ちた後も実は枝に残り、色彩が薄れてゆく季節の中で、時にはハッ≠ニする美しさを提供してくれる▼バラ科で、日本では九州、四国から北海道まで広く分布する。その名前は「たいへん燃えにくく、七度竃(かま)に入れても燃えない」ということから付けられたと言われている。高級な炭である備長炭の材料にも使われている▼実は鳥のエサにもなっていて、食べ物の少なくなる初冬、紋別の市街地ではキレンジャクがナナカマドの実に群がっている光景をよく見る。大山を歩いていると、時々実をついばんでいるカケスの姿を見ることが出来る。鳥類の食べ物としても貴重なようだ▼以前、あるお年寄りの女性からこんな話を聞いた。紋別の開拓時代、本州方面からの入植者は、特に寒さの厳しい冬に心が折れそうになった。そんな時、雪の中に赤い色彩を放つナナカマドに心を寄せ、希望と、ひとときの安らぎを得たそうだ。今の時代でも、雪の朝、無数の赤い実が白い帽子をかぶったような光景は、モノトーンの情景の中で際だって美しい▼北海道の木であり、道内でも紋別をはじめ旭川、稚内、江別、士別、苫小牧、室蘭など26の自治体が市町の木に指定している。鳥類の命を支え、人の生活に役立つ炭として活用され、過去から現在に至るまで、人々の鑑賞の木として、または先達に勇気を与える木として大地に根を張ってきた。地域の歴史と共に、私たちの身近で育ってきた木でもある。