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デスク記事

2011/11/04

 数年前、上川町に住む知人が「バイパスが出来れば上川は素通りされる。観光客の激減が心配」と言っていた。彼は国道39号線添いに店を構え、観光客相手の商売を長年続けてきた。すでに旭川―紋別間の高規格道路が丸瀬布まで開通し、車の量も客足も急減しているという▼28日、いつもは高速道路を利用して札幌方面に行くが、10年振りに一般道を通ってみた。旭川から神居古潭―深川―滝川の道すがら、国道添いの風景は随分淋しくなっていた。以前あったレストラン、お土産やさんなどが店を閉じ、中には廃墟になっている大きな建物もあった▼所々に果物を販売している屋台もあるけれど、以前はもっと多くの店が軒を連ねていた。秋の石狩川の景色は、以前と変わらず美しいものの、観光地としての、かつての賑わいは影をひそめていた。以前、時々利用したソバ屋さんも、建物は朽ち果て、随分前に閉店したことを示していた▼その山側に雪よけフェンスが銀色に光る「道央自動車道」が空間に浮かんでいた。都市と都市を短時間で、快適に、安全に結ぶ高速道路。その代わり、従来の国道沿線、都市の姿まで変わってしまった。時代の流れの中で、何か新しいものが生まれるとき、それまでの何かが犠牲になる。新旧2本の道路に象徴されていた▼しかし、高速道路は点と点を結ぶ矢のような道。それに比べ一般道には、人の生活の匂いがある。焼き畑の煙の香りが室内に侵入してきた。道ばたで笑顔で会話する人の姿が見える。一般道は都市間を結ぶ線であり面でもある。味わい深い道だ。