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デスク記事

2011/11/12

 ハワイ生まれの日系アメリカ人、アメリカ上院議員ダニエル・イノウエ氏(87歳)が、日米両国の友好親善に尽くしたとして桐花大綬賞を受けた。イノウエ氏は「日本人の祖父から義務と名誉の2つを大切に≠ニ教えられ、それに従って生きてきた」と、授賞の席で述べた▼第2次世界大戦ではアメリカ軍に志願し、ヨーロッパ戦線で右腕を失った。終戦直後の祖国・日本を訪れたとき、焼け野原で1人の日本人少年に出会った。食べ物がなく、粗末な衣服のその少年に、イノウエ氏は自分のおにぎりを差し出し「お食べ」と言った▼少年は感謝の言葉を返しながら、そのおにぎりを大切そうに懐(ふところ)にしまった。イノウエ氏が「お腹すいていないの?遠慮しないで食べなさい」と言うと、少年は「ありがとうございます。でも私を待っている妹に食べさせたいのです」と答えたという。イノウエ氏を感謝の眼差しで真っ直ぐ見つめる少年の目は、とても澄んでいて力強く、イノウエ氏は「ああ、日本は大丈夫だ。きっと復興する」と信じたという▼「義務」と「名誉」。これからの日本人に一番大切な言葉のように思える。戦後、目覚ましい復興、経済成長を遂げた日本は、しかし繁栄の中で失ったものも多かった。その1つが「義務」を遂行する心の欠如ではないだろうか。受ける権利を主張し、成すべき義務を怠ってきた感がある。しかしこれからの日本はそうは行かない。権利を口にする前に、義務を先行させ、それを「名誉」「誇り」とした時、日本の真の復興が達成されるのではないだろうか。