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デスク記事

2011/12/09

 塩酸と硝酸を3対1の体積比で混合した液体を「王水」と言い、酸化力が強く、通常の酸では溶けない「金」をも溶かす。溶けた金は黄色い液体になり、元の姿とは全く異なる状態になる▼オリンピックという最高の舞台で、2つの金メダルを獲得した内柴氏が、大学の女子柔道部員に暴行し、逮捕された。日本の国技のひとつであり、今では世界に広がった武道。「礼に始まり礼に終わる」と、古来からの精神を基調にしているが、内柴氏はここから逸脱した▼内柴氏の金の心を溶かしてしまったものは何なのか。それは自己の内にあった異性への弱さなのだろうか。内柴氏の栄光は、その弱さという王水のため消滅した▼国技の相撲もまた、八百長、賭け事で「武道の精神」という金看板を失った。これで柔道、相撲という、日本の武道の信用がメルトダウンした。相撲は建て直しの段階にあるが、世界に広がった柔道の信用、さらに言えば日本人の心の文化にまで影響は広がってゆく▼「巨人、大鵬、卵焼き」という言葉が50数年程前に流行した。元経済企画庁長官の堺屋太一氏のコピーで子供の好きなもの>という意味と大人の常識を持てない半人前の人≠ニいう意味がある▼内柴氏の行為もその範囲にあると思われるが、コピーにある「巨人」という球団も、内輪もめから裁判沙汰に発展しそうだ。プロ野球の代名詞であり、子供に人気のある巨人軍の、醜い内部紛争は、プロ野球全体へ影響することが心配される。それぞれに共通するのは、自分の立ち位置と誇りを失っている姿だ。