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デスク記事

2011/12/11

 約50年前、学生時代に、過酷な米担ぎのアルバイトをして、発売になったばかりのカメラ「オリンパスペン」を購入した。当時の最先端を行くカメラで、とても嬉しかった事を覚えている。ペン≠フ名前は現在にまで続いている▼「オリンパス株式会社」の前身は、大正8年の「高千穂製作所」。高千穂の山は、日本神話で神々が集う山≠ニされ、その名を取っての企業名である。戦後間もない昭和24年に社名を「オリンパス」に変えた。ギリシャ神話のオリンポス山は、同じく神々が住む山とされている▼日本の光学、電子機器のトップメーカーに育った同社は、主たる事業分野を医療機器関連に定め、内視鏡分野では世界シェアーの75パーセントを占める世界企業になった。しかし、神々の居場所がなくなってきた。10数年前から「損失隠し」など不正な企業運営を行ってきたからだ▼経営者3代に渡って、確信犯的なトップ役員の不正。その所行が第三者委員会によって明白になってきた。その結果、役員はもとより経営陣を大きく変える総退陣人事が近く行われ、オリンパスは生まれ変わろうとしている▼国内第3位の総合製紙メーカー・大王製紙の役員が、会社の大金をラスベガスの賭博に使い逮捕された。両企業とも、それまでは社会的な信用の高い、国民生活に密着した企業だった。それが脆(もろ)くも崩れ去って行くのは、企業にガバナンス(企業統治)能力が欠けていたからだろう。不祥事は、単なる企業の問題ではなく、世界に於ける日本の信用に関わる。モラルの欠如、緊張感の喪失が、一連の事故を招いた。