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厚労省が、企業に「本人が希望すれば、65歳まで雇用を義務づける」とする原案をまとめた。この案の危険さは誰もが認識出来るだろう。当然、厚労省もこの原案がいかに無茶なものか熟知しながら、背に腹は替えられず、なりふり構わず国民に示した。年金が崖っぷちに在る事を感じさせる▼年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、60歳の定年以降の無収入を回避するため、企業に対し雇用を5年間延長せよ≠ニ無理難題を押し付けることになった。もしこれが実施されれば、企業は身を守るため、全体の給料を下げたり新規採用を控えるだろう。企業からエネルギーが失われ、職員間の和は乱れ、生産の効率化は望めない。企業が元気を失えば、国家の収入が小さくなり、消費も落ち込む▼公務員の一般企業への天下りは、中央、地方の区別なく、今よりもっと激しくなり、新卒者の就職はさらに悪化する。未来と年金受給者を背負う若い人の就労の場所が少なくなれば、若者の心から光が消える。そんな心配が現実のものとなるかも知れない▼しかし、果たしてこれは「悪法」なのだろうか。実施されれば色々な弊害が生まれてくるだろう。だが、世界に誇るべき年金制度はすでに危険ラインを越え、破綻(はたん)は目の前にある。国家は存亡の危機を迎えているのだ▼それだけ日本は追い詰められている。日本は長い間、収入以上の生活をし、そのツケを後世に先送りしてきた。「頭隠して尻隠さず」を繰り返し、今日を招いている。もう頭を出さなければならない。日本は踏みとどまることが出来るのかどうか。正念場に立っている。