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デスク記事

2012/01/06

 凶悪犯でも、長い間逃亡していると、世間も取締機関も意識が風化してしまうのだろうか。報道によると、警視庁から特別手配されていたオウム真理教の平田信容疑者が、日本の治安の総本山・警視庁に出頭していながら、相手にされず事実上追い返されていた。信じられない出来事だ▼平田容疑者は、初めは大崎署に自首しようとしたが、警察署の入口が分からず、公衆電話から警視庁のオウム真理教特別手配のフリーダイヤルに何回もかけたが繋がらず、110番して警視庁に出頭することにし、山手線などを使って霞が関の警視庁に着いた。しかし「平田です」と名乗っても取り合ってくれず、仕方なく丸の内署に出頭し、ようやく逮捕されたという▼もしこの間、平田容疑者が「警視庁にさえ追い返されたのだから、このまま生活していても誰にも気づかれずに済む」と考え、安心して市民生活に溶け込んだらどうだったのか。日本の警察の、取り返しのつかない大失態になっただろう▼全国の警察署、公共の場所等に似顔絵を貼り、等身大の像も飾り、一般市民に情報提供を呼び掛けながら、その警視庁が出頭してきた本人を追い返し、逮捕をタライ回しにするという、信じられない失態を犯した。今後凶悪犯が「時間が経てば逃げ通せる」と考えるきっかけを作ったとも言える▼「逮捕して下さい」と目の前に現れた容疑者、それも全国民に協力を呼びかけてきた人物を、相手にせず追い返すという現実。危機感なき治安体制と言えよう。時間の経過は人の感覚を鈍らせ、やがて事件の風化につながるのだろうか。