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デスク記事

2012/01/11

 「東北バブルが始まろうとしている。巨大な復興資金が投入されるだろうが、これを歓迎して良いものかどうか」と言う声が被災地で聞かれる。震災被災地の多くの経済人は複雑な心境のようだ▼東日本大震災の復興計画に、12年度は3兆8千億円が計上された。専門家の予測では、3年間に約17兆円の復興特需と、57万人の雇用が生まれるという。早くも色めき立っているのが大手ゼネコン(総合建設会社)。各社は人材と先端技術を東北地区に集め、事業を展開する方針▼被災地の経済人が心配するのは、東北地方が復興バブルのまっただ中に入り、自分たちの地域が、大手企業による「草刈り場」になりはしないか、ということ。「自分たちのマチの再建は、自分たちの考えも入れてマチ作りをして貰いたい。その余地があるのだろうか」と心配する▼彼らはこんな例え話をしてくれた。「東北新幹線が完成し、新しい駅が出来、私たちは郷土の発展を期待した。しかし駅周辺や商業適地には中央資本が流れ込み、一見賑やかになったマチも、自分たちとは無関係になってしまった」と▼「確かに大手でなければ、大型プロジェクトは達成できないだろうが、大手の金儲けのターゲットになっては困る。都市には、そこに住む人の意志、歴史性など、無形の要素が込められているべき。津波と地震、原発に痛めつけられた郷土に、今度は復興の名のもとに土足で上がり込まれては、私たちの誇りが失われる。立派そうに見える都市が出現しても、それはガラスの城だ」と表情を曇らせる。関係者は、その声に耳を傾けて欲しい。