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デスク記事

2012/01/13

 「大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ます」。昭和23年7月、国民の祝日として定められた「成人の日」の精神である。この年、天皇誕生日、憲法記念日、こどもの日、文化の日など9つの祝日が決まった▼戦勝国による一方的な裁判となった「極東軍事裁判」=東京裁判=が行われるなど、戦後の日本が再生への道のりを歩み始めた年でもある。帝銀事件(帝国銀行椎名町支店の12人が毒殺された事件)など暗いニュースが多かったが、水泳の古橋選手が世界新記録を出す明るいニュースもあった▼その年に制定された「成人の日」も、今年で64歳=Bこの間、新成人を取り巻く社会環境は変化し、成人の考え方も変遷してきた。そして改めて法の精神に立ち戻ると、その中の「自ら生き抜こうとする」という文言の、意味深いことに気づく▼戦後の荒廃の時期、そこから立ち上がり、這い上がって経済を成長させた時期、そして豊かな国になった現在まで、それぞれに困難な局面を打破する努力をしてきた。しかし、豊かな国になった反面、若い人の未来は決して明るくない▼伸びきったゴムのような日本は、世界最大の債務を抱え、年金を含む社会福祉の不安定、少子高齢化による若者への負担増、世界経済の鈍化や近隣諸国との軋轢(あつれき)など、先行きの不安材料を抱えている▼これからの時代、「生き抜くこと」が、個々のテーマになるだろう。制定当時の、この言葉が、非常に現実的な言葉として重く響く。成人者に望みたい。これからの人生、強い心で生き、そして他に優しい心を忘れずにと。