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デスク記事

2008/09/28

 人にはそれぞれ「立ち位置」というものがある。その人の環境、個性、時期などで、その位置が決まる。中曽根康弘・元総理は政界引退後、90歳になっても政界のご意見番として影響力を発揮し、その世界観、日本の未来への包括的な思考は壮大で、強い説得力を持つ▼小泉元首相が引退を表明した。「小泉劇場に幕」「最後のサプライズ」などの表現が目立つが、引退は劇場≠ナもサプライズ≠ナもない。小泉流の、筋書き通りの行動であろう。「65歳で終止符」は、早くから意思表示していた。これに対し政治評論家や議員が「まさか」「ジョーク」と信じなかったのは、彼等が自分の、狭い思考回路の中で語っていたからだ▼小泉さんは引き時を桜の花にたとえ、散り際の大切さを語っていた。それを間違えば、花盛りの桜でさえ、美しさが失われることを知っていた。政治家としての個性が強烈で、その行動も常人の予測を越えるところにあったが、そういう人こそ自分の「旬」を心得ているものだ▼自分の信念に添って成すべきことを成した小泉さんにとって、以降国会に議席を持つことに大した意味はない。そして、自己の政治哲学の範疇にないことも、早くから感じていたと思われる。「見事な決断」と言う人もいるが、決断はもっと以前の時期にあったと思われる。淡々とした時間の流れの中で、引退を表明したのだろう▼多くの人は、自分を過大評価する傾向にある。「なくてはならない人」なんて、この世に居るのだろうか。人間は万能ではない。反対に、自分にない良い面が、必ず他にある。そしてその人もまた、欠点だらけの人なのだ。一般的に、引き際の悪い人が多すぎる。バトンを素早く渡すことが、最後の仕事と思うべきだろう。