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デスク記事

2012/01/21

 東日本大震災で大きな被害に遭った釜石市の、釜石小学校の児童全員が、避難訓練など日頃の津波への心の備えで、全員の命が助かった。NHKの番組「クローズアップ現代・子どもが語る大震災」で報道されていたが、命を守った最大の要因は「自分の命は自分で守る」という心構えだった▼放課後で全員が帰宅し、多数の児童が、津波で壊滅的な被害にあった海岸線周辺にいた。しかし大きな地震が起きたとき「津波が来る」と、児童達は急いで高台に避難した。1人で留守番をしていた子も、兄弟で遊んでいた子も、日頃の訓練通り高台に走った▼この地方には「津波てんでんこ」と言う言葉がある。津波の時は自分の力で避難すること≠ニいう意味だ。番組で1人の小学生が「自分の命は自分が守らなければ…。だから走った」と▼11年前、兵庫県明石市の花火大会で11人が死亡、多数が重傷を負う歩道橋事故が起きた。警察の副署長が責任を問われ、その初公判が19日にあった。遺族側の弁護士は「混雑する歩道橋で、雑踏事故が起きることが予見された」と副署長の有罪を主張した▼花火大会全般を指揮・監督する警備側の責任は、確かにあるだろう。同時に、雑踏を予見できるなら、そこに子どもを連れてゆく父母、一人で花火見物に行かせる大人にも、責任はあるのではないか。社会は、安全への努力はするが、それを保証するものではない▼「自分の命は自分で守る」を実践した釜石小児童の言葉が重く響く。日本人は「サービス過剰社会」に慣れ過ぎていないだろうか。生命は、他に依存すべきものではないのだ。