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「攻撃は最大の防御」という言葉は、ラテン語から来たという。有名な人の格言でもなく、言わば「詠(よ)み人知らず」。しかし折に触れ、これ程身近に使われている言葉もあまりない。それを実感したのが6日、ヨルダンで行われたサッカー・ロンドン五輪アジア最終予選の日本ーシリア戦▼この試合の勝者が五輪出場権に大きく近づく。日本チームは極めて大事な大一番≠ニ位置づけていた。しかし結果は完敗。1│2の一点差以上に、シリアの一方的な試合内容だった。言い換えればシリアは野武士チームで、日本は過保護チームの印象。それが試合内容に現れた▼シリアは現在、政情不安定で内戦状態。選手は「こんな時だからこそ、国民に五輪出場≠ニいう希望をプレゼントしたい」と、闘争心をピッチ(試合場)に向けた。また、C組1位の日本に負ければ、五輪出場が絶望的になる瀬戸際の試合だった▼ピッチの芝生は荒れ、いつもは整備された芝生でプレーしている日本選手に厳しい環境。パスの連携が悪くボールが通らない。日本側サイドに突っ込んでくるシリアの攻撃に、日本は相手サイドに大きく蹴り返す単調なプレーが続いた▼1│1で迎えた後半、日本選手が倒れた。起きあがろうとすると、ベンチから「倒れていろ」の指示。この分では勝てない≠ニ考えたのか、引き分けに持ち込みたいベンチからの指示▼その後、必死の攻撃を続けるシリアが、遂に点をもぎ取った。日本チームは堅さ、ひ弱さが目立ち是が非でも勝つ≠ニいう強い気持ちに欠けた。格闘技で防御に回った日本の完敗。技術以前の試合だった。