デスク記事
「オホーツクの四季で一番好きな季節は?」と、よく聞かれる。四季それぞれに良いところがあって、少し迷うけれど、私はやはり「それは冬」と答える。相手は「え〜っ、寒いでしょ、冬は。それに流氷も来るし」と、怪訝(けげん)な表情をする▼「どうして?」と問われれば、具体的な理由を明快に示すことは出来ない。確かに寒い∞除雪に苦労する∞日照時間が短い≠ネど、負の材料は多くある。しかし私にとっては、それが冬が好きな理由なのだ。晴天の早朝の、キーンと張りつめた空気、綿毛のように舞い立つ新雪、流氷のきしみ音。それらは純粋で透明な冬の匂い≠ナもある▼食べ物などが雪に埋もれ、きっとお腹をすかしているだろう鳥たち。餓死することもあるようだが、命の灯を燃やし続け、ひたむきに生きる姿がいじらしい。夏に比べ、明らかに細身になったキタキツネは、危険を承知で民家近くまで現れる。野生の生き物にとっても、人間にとっても冬は厳しさが増す季節だ▼その緊張感がオホーツクにはある。四角い太陽など稀(まれ)な自然現象を見ることが出来、たまに見るダイヤモンドダストは「冬こそ北海道」を感じさせる。そして冬の寒さ、厳しさあればこそ、淡い色彩の春、強い光がまぶしい夏、色彩豊かな秋が際立つ▼今年の冬は例年より一段と厳しい耐える冬=Bしかし、その向こうに、淡い色彩の春が見え始めた。それも冬があるからこそで、誰もが春を心待ちにし、期待に胸を膨(ふく)らませる。これからも「冬こそオホーツク」と答えるだろう。