デスク記事
人は、フッと立ち止まる時があると言う。自分の進むべき方向はどこなのか、何を目指したら良いのか、心の奥底にある憧れは何なのか、そんな時に歩みを止め、周囲を見回す。それでも求めるものはなかなか見つからない。自分を探すことの難しさを、誰もが一度は経験する▼先日のテレビ「佐和子の朝」で、ゲストに出演した生物学者・福岡伸一氏はこう語る。「自分探しは、自分の中で探しても見つからない。他者との関係の中でこそ、自分を見つける事が出来る」と。それは自分から離れる謙虚さを説いているのだろうか▼また細胞についてこう語る。「一つの細胞は、他の細胞との関係を保って存在する。自己を主張せず、他との協調で自分の役割を果たす。しかし、それをしない細胞がある。それはガン細胞なんです」と▼福岡先生の言わんとする所は何だろう。それは、人間は自分にはどうしても甘くなり、従って厳しく自分を見つめることは出来ない。だから、自分の周囲の人との関係の中に、自分を見出す瞬間がある。自分と他は合わせ鏡と言う訳だ▼生物体は膨大な数の細胞で成り立っている。それら細胞の一つひとつが役目を果たし、生命体を成立させている。自己主張ばかりせず、他との調和を保つ必要がある。どうしても調和が保てない我儘な細胞とは、それがガン細胞と言う訳だ▼そのミクロな構成の中で互いの細胞が保っていることを、福岡氏は「動的平衡」と表現する。自分探しをする前に、他との交わりの中に自分が映ることを、素直に受け入れる事が大切なのだろう。細胞に学びたい。