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デスク記事

2012/03/21

 地球上の北半球の春に昼と夜の長さがほぼ同じになる日を「春分」と言う。この日を境にして夏至にかけて、昼間のほうがどんどん長くなり、夜が短くなってゆく。日本では昭和23年に「自然を尊び、生命をいつくしむように」と国民の祝日とした▼その前後7日間を「彼岸」と言う。「暑さ寒さも彼岸まで」と言うように、冬の寒さも次第に遠ざかってゆくのだろう。確かに、この流氷のマチ紋別でも、春の足音はかすかながら聞こえて来る。日差しもどこか柔らかく、雪解けも早くなってきたように思える▼近年では珍しく、流氷は目の前の海を覆っている。これから行ったり来たりを繰り返すのだろうか。18日、ガリン号は観光客で賑わっていた。札幌から車で来たという人が「テレビで流氷がびっしりと知ってこのチャンスを逃すな≠ニ、カメラを抱えて乗船した」と話してくれた▼羽田│紋別の機内に、機長さんから「これから海上に出ますが、美しい流氷を見ることが出来ます」とアナウンスが流れた。このサービス精神が、地元の人間として嬉しい。乗客からは、窓から見える流氷に「キレイ」「ウワー、びっしりだ」「これから、ガリンコ号であそこに行くのね」と歓声が起きた▼観光面では大歓迎だが、春漁を間近にする漁業関係者にとっては、居座る流氷が気がかり。久しぶりに「流氷退散祈願」を行い、漁場から流氷が去ってくれるよう願った。この地域が、自然相手に生活していることをつくづく感じる。絶妙のタイミングで流氷に来てもらい、丁度良いときに帰って戴く。ついそんな都合の良いことを思ってしまう。