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明治の小説家・二葉亭四迷は、代表作「浮雲」で、公務員を挫折した気の弱い青年の姿を描いている。文中で公務員のことを「今の、いわゆる官員さま、後の世になれば社会の公僕とか何とか名告(なの)るべき方々」と表現している。明治時代は官員と呼んでいた▼今の時代、公務員のイメージは「一生食いっぱぐれがない」ではないだろうか。しかしこれ自体おかしな解釈だ。公僕は公衆に奉仕すべきもの。公のしもべの精神が基本である。もし公衆が貧困にあえぎ、食さえ不自由な時自分だけは食いっぱぐれがない。良かった≠ヘ、本来通用しない論理だ▼紋別市役所で大幅な人事異動が行われた。庁内はあいさつ回りでごった返している。願わくば、新しい仕事への一日も早い慣れと、精進を期待したい。しかし考えてみれば、同じ人間が庁内の仕事をグルグル回りしているに過ぎず、これ自体に特別な期待感はない▼要は、職員の心に公僕としての自覚があるかどうか│だ。大阪の橋下市長は「公務員が永久就職の場であってはならない。資格なき職員は公衆のためにならない。去ってもらう」と言う。公務員自身が持つべき基本的な考えであろう▼紋別市役所の新規採用が19人。彼らに言いたい。「必ずしも先輩を見習うな。一生生活に困らない≠ネどと思うなかれ」。「公務員とは何か≠正しく理解し、自己に厳しくあれ」。「時間が経つうちに汚れた考えに染まる危険を認識せよ。そうなれば、すでに公務員としての誇りある生き方を捨てたも同じだ」と。公に奉仕する喜びを、人生の宝として欲しい。凛とした公務員になるために。