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デスク記事

2012/04/05

 3月31日、用事があって京都駅に降りた。駅前に大きな人だかりが出来ていて、激しい口調の言葉が方々から発せられていた。大学などのスポーツ関係の壮行会かと思ったが、その集団の真ん中に立って演説していたのが細野豪志環境大臣(原子力行政担当)▼この日山田知事に「津波被災地の瓦礫(がれき)受け入れ」を要請するため京都入り。その足で駅前での演説となった。しかし、周囲を取り巻く集団は「京都を放射能で汚すな」「瓦礫受け容れ反対どすえ」など大書したプラカードを掲げ、細野大臣の拡声器の声が聞こえない程、激しい怒声を浴びせていた▼その側で、多くの若い女性達が、タレントにかけるような歓声をあげ、携帯電話で撮影している。「被災地の方々は、ものすごい量の瓦礫に悩んでいます。少しでも協力するのが人としての心だと思います」と細野大臣が言うと「京都には似つかわしくない」「ほかで受け容れればいい」「琵琶湖の水が汚れる」などと反応する▼震災後「絆」という言葉が生まれた。しかし、この日の京都駅前で展開された光景は異様な雰囲気だった。大臣が用意したチラシは、混乱を避けるため遂に配布できなかった。被災地の方々がこの光景を見たら、どう思うだろうか▼細野大臣は、瓦礫受け入れを呼びかけ全国を行脚している。反対も賛成も、色々な考えがあるだろう。しかし、被災者の思いを代弁して、協力をお願いしている大臣の声くらい、静かに聞くべきでないだろうか。日本文化、日本人の心が集積している京都での光景としては、あまりにも違和感があった。