←前へ ↑一覧へ 次へ→

デスク記事

2012/04/14

 東日本大震災でマチが壊滅した大槌町を訪問した。小・中合同の仮校舎で子ども達と話し合いながら、私はこの子達こそ今後の日本を背負ってゆくリーダーになると確信した。目の前で津波にさらわれてゆく肉親、友達、消えてゆくふるさと、その中に生まれた思いやり、他へのいたわり、そして次への復興。彼らは言う「大槌町をもっと良いマチにする人間になりたい。このマチを離れない」と。これ以上ない悲しみと、だからこそ立ち上がる勇気を持った子供達は、真のリーダーとしての素養を身につけた▼岩手放送(IBC)が制作した「3・11岩手大津波の記録」のDVDが送られてきた。2時間半に収録された映像には、被災した12市町村が津波に襲われた時の状況、避難生活、復興への道が描かれている。そして、その多くは被災者自らが撮影した映像である▼ビデオカメラ、あるいは携帯電話での映像には、足下まで激しく迫ってくる津波や叫びながら逃げる人々などの姿が、時折映像が逆さまになっていたり、何が映っているか判明できない映像で表現されている。「おばあちゃん、早く逃げれ。ホラ、すぐ来てるぞ」。そして「俺、何もしてあげれねえ」と涙声になる▼津波のまっただ中にいて、自分の肉親や近所の人、家、車などが波に消えてゆく地獄の有様を、震えながら撮影している映像は、テレビで見る映像とは全く別である。身近なものへの愛、絶望感、壊れてゆく故郷への思い。それらが、痛い程伝わってくる。そして、大槌小・中学生と同じように、地元の人に共通しているのは「故郷の復興」への強い決意である。