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昨年99歳で詩集「くじけないで」を出した柴田トヨさん(現在百歳)の詩「思い出〜桜の木」。
葉桜の下で
父ちゃん父ちゃん
と、あなたに
まとわりついている子供を見て
もう少しがんばってみよう
私は思ったの
人並みの暮らしが出来るようになったら
また来よう
約束して見上げる空
家族のような雲が3つ浮いていた
もう63年も前のこと
あの公園の桜の木
今でも元気でいるかしら(抜粋)▼雲を見上げながら、亡くなった夫との情景を桜の季節に回想する、柴田さんの純≠ネ心が透明感を伴って伝わってくる。詩集はベストセラーになり、多くの人に生きる勇気を与えているという。人生の大先輩の詩に、読む人の心も素直になるのだろう▼「山家集」で知られる鎌倉時代の歌人・西行法師は、23歳で出家し、諸国漂流の旅に出た。77歳で死去するが、晩年の作品に
願わくば 花(桜)の下で 春死なん その望月の如月の頃
がある。西行が、桜に寄せる憧憬を強く感じる▼桜前線が北上してきた。東京の友の便りでは、ほぼ散りかけているという。桜の季節、日本人は何故かくも桜に心がひかれるのだろう。満開でも華美でなく、どこか控えめで、そしていさぎよく散ってゆく。日本人の心にシックり来るものがあるのだろうか。
貴方には、桜にまつわるどんな思い出がありますか。