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デスク記事

2012/04/22

 警戒心を笑顔に隠し、形ばかりの握手を交わす。相手がナイフを持てば、こっちも持ち、ピストルで脅かされれば、密かに機関銃を用意する。「そっちが来たら、痛い目にあうよ」と無言で語り、それでも友情を続けるが如き笑顔を交わす▼日本をめぐるアジアの状況はまさにそんなところだ。国民に食事さえ提供できない北朝鮮が、核とミサイル開発に奔走する。相手を脅かしながらの外交交渉で、自らを有利にしようとする▼インドがアジア、ヨーロッパを射程圏に治める、核弾頭の搭載可能な弾道ミサイルの実験に成功した。中国の軍備増強、海洋進出を意識してのものだ。今後の世界は、中国とインドが経済発展と同時に軍事強大国になると予測される。両国とも国防予算を大幅に増やしている▼重ねて、インドは国産空母、原子力潜水艦を建造中。ロシアからも原潜の貸与を受けている。この動きは中国の一連の軍事力強化と同一だ。両国の大量破壊兵器の競争は、相手を意識しながらさらに激しくなりそうである▼世界の警察と自負し、地球上同時2カ所の紛争に対応できると自負していたアメリカに、すでにその勢いはなく、多国間の軍事協力で対応するしか方法はなくなった。世界は非常に危険な方向を向いている▼偶発的に、どこかがナイフを振り上げれば、ピストルが撃たれ、撃たれた方はさらに強力な武器で報復する。気がつけば、引き下がれない状況になり本格的で、破壊的な戦いに陥る。「この文明の発達した世界が、まさか…」と思うのは早計である。人類は、そこまで利口になっていないのではないだろうか。