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2010年に野球賭博、11年に八百長疑惑問題が起き、大相撲界は大揺れに揺れた。内部からの告発、その信憑性への疑問、世間の批判、それらを総合しての黙視できない状況下で、相撲界は現役力士の解雇、本場所の中止を含む、今まで経験したことのない混乱を招いた▼以降の場所では満員御礼どころか、空席が目立つ場所が続いた。古墳時代の埴輪(はにわ)にも描写されている相撲は日本の国技とされているが、その行く末に大きな陰を落とした。しかし、大相撲は日本人の心に染みついており、その後次第に人気を回復してきたと思われる▼そんな時の旭天鵬の優勝は、大相撲に新鮮な風を送ってくれた。11年振りの平幕優勝、37歳7カ月の史上最年長優勝。その優勝パレードの旗手は、自らが志願した横綱白鵬が務めた。「自分の優勝より嬉しい」と、パレードの脇を固めた白鵬の心意気は、真の横綱は土俵で勝つことばかりではない事を教えてくれた▼大関6人。一人横綱を務める白鵬。絶対横綱≠フ白鵬にも、先場所あたりから陰りが見え始めた。しかし大関陣の不振から、次の横綱像が見えない。今場所の平幕力士同志の優勝争いは、決して不思議なことではなく、今の大相撲の現状を見事に表している▼インタビューでは「やっちゃいました。このところ眠れずお酒を飲んで…。20年間相撲をやってきて良かった。涙もろくなっています」などの言葉にも旭天鵬の人柄が現れ、ファンに向かって何回も丁寧に頭を下げる姿に拍手が贈られた。大相撲に光が差したような夏場所だった。