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デスク記事

2012/05/25

 「パソコンは便利だが、簡単な漢字でも、いつの間にか忘れ、文字を書くと手が疲れる」と、よく聞く。しかし文字にはそれぞれ意味があり、長い時間をかけて形成されてきた、人間の文化が凝縮されている。文字の成り立ちを知るにつけ、意味の深さを知る▼ネット社会になり、最近ではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・システム)等を通じて、世界の人とネット上で会話を交わし、突然知らない人からメールが届くことも多い。それがどのような人なのか、どのような影響があるのか、何も分からないまま、文章だけが世界中を飛び回る▼ネット社会は「無表情な交流」につながる恐れがありそう。デジタルな世界が発展、拡大化すると、反比例して失われてゆくのが各人の考え方や感情、情緒、奥深さなどではないだろうか。アメリカではネット疲れ≠ェ深刻な社会問題になっているという。マイクロソフトやグーグルなどの業界大手が、過剰なデジタル社会に対処する方策を検討中という▼「ネット社会との距離のとり方」を出版したアメリカ人・ウイリアム・パワーズは、ネットを活用する作家だが、週末の2日間、家の全てのモデムの電源を切り「インターネットの安息日」を設けている。彼は「孤独の中でこそ、私たちは自分ばかりでなく、他者との本当の出会いが果たせる」という▼私もそうだが「インターネットは即、世界とつながる」ことを当たり前と思っている。しかしフッと考えると、机の前で指を動かすだけで世界の情報を即得られることは、木片をかじるような無味乾燥な作業であることに気づく。