デスク記事
先日、東京のサントリーホールで、日本を代表する交響楽団のひとつ「日本フィルハーモニー」の演奏会が開かれた。曲目はシューベルトの「未完成交響曲」。やはり生演奏の魅力あふれるものだった。指揮者・小林研一郎氏は、終了後団員一人一人と握手し、満面に笑みをたたえ、聴衆にも何度も頭を下げた。満足の行く演奏だったようだ▼ここで意外な発表があった。それは日本フィルの存立を左右する重大な問題が発生しているということ。政府が進めている法人改革で、来年11月末までに公益財団法人(新公益法人)に移行しなければ、従来の税の優遇を受けられないということだ▼しかし、移行するためには債務超過を解消し、黒字経営を達成しなければならない。同フィルハーモニーは過去にあった約3億5千万円の債務を自助努力で減らし、債務解消にあと一歩までこぎつけた。しかしリーマンショック、政府の事業仕分け、それに加えて東日本大震災などによる公演中止などで、再び債務が発生し、現在約2億円の超過債務を抱えている▼団員の給料の大幅減、演奏会の開催など経営努力を続けてきた。しかし来年までの債務返済は、同楽団にとって非常に高いハードルになっている。演奏会を終えてホールを出るとき、団員が募金箱を抱えて「ご協力を」と呼びかけていた。芸術と現実の間にある大きなギャップ。それを越えようとする団員の努力である。見たくない光景でもあった。日本の経済改革の一面が、ここにも現れ、日本フィルハーモニーにとって、団の存続問題は、いまだ「未完成」のままだ。