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仲間にいじめられたのか、そこに居にくくなったのか、それとも羽を広げると身体がフワッと浮いて、そのまま大空に舞いあがったのか。気持ち良く飛翔すると、やがて着いたのが小樽。でも、そこは馴染めず、本能のまま北へ向かい、オホーツクにあるコムケ湖に着いた▼アフリカ、南ヨーロッパなどを故郷とするフラミンゴは、塩湖など特殊な環境を好むという。コムケ湖は海水が混じった塩湖。しかも干潟が多く食べ物は多い。サバンナの野生動物が遠くの水を嗅ぎ分けるように、フラミンゴもオホーツクの果てに最適の湖を見つけたのかも知れない▼何万羽の仲間と大きな群れを作り広大な大地に生き、自由に飛翔していた。動物園で、エサを探す心配もなく生きてきたけれど、なつかしい故郷の空気を思い、羽を広げたのだろうか。さすが大陸の鳥。飛翔能力は抜群のようだ。動物園を出て20日間になる▼フラミンゴと言う名前はラテン語の炎≠ノ由来する。湖の貴婦人と呼ばれるように、その姿は美しく、名前まで優雅だ。コムケ湖を飛ぶ姿は周囲の自然に溶け合い、お蔭でコムケ湖さえも輝いて見える。主≠フアオサギは、突然の仲間にも優しく、フラミンゴを仲間として受け入れている▼一緒にエサを求め、囲まれて飛翔する姿は、アオサギに守られているようにも見える。このままコムケ湖に居て、その先冬はどうするのか。アオサギと共に南へ移動するのか。あるいはここで命を終えるのか。でも、このフラミンゴが哀れには見えない。自由を得た、そんな鳥が一羽くらい居てもいいような気がする。