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イジメが原因と見られる中学生の自殺が続く。共通するのは誰にも相談できず、一人苦悩し、やがて絶望し、追い詰められ死を選ぶ。限りなく孤独な少年たちの状況は、やるせない▼随分以前、紋中が荒れた時期に、南先生という音楽の教師がいた。生徒指導を担当していたが、彼は暴力をふるう少年たちと真っ向から対峙(たいじ)した。ある日、角材で殴られ、足を骨折し松葉づえで登校した。彼はこう言っていた。「命がけの日々です。夜間呼び出されましてね、私は身を守る角棒持参で出かけるのです。全身傷だらけですよ」と言って、生々しい傷跡を見せてくれた▼身体を張って指導した結果、最後は分かり合え、生徒たちは抱き着いてきて涙を流したという。「教師としての喜びより、命が助かって良かった│という思いでした」と笑いながら語っていた。彼は今、どこでどうしているだろう。そんな教師も紋別にはいた▼第二次世界大戦中、ナチスのユダヤ人迫害で、ガス室に多くの命が消えた。その中に、ある孤児院の少年たちも含まれていた。校長のユダヤ系ポーランド人・コルチャックは有名な作家であり、医師でもあった。彼に救済の手が伸べられたが、彼はそれを断って孤児たちと一緒にガス室に向かった。「こわがることはないよ。先生も一緒だからね」と▼自殺する中学生は、苦しみを分かち合える友もなく、まして最も信頼すべき先生もいない。始まったばかりの人生を、一人ぼっちで閉じて行く。寄り添ってくれる教師がいれば…。いじめの生徒に、正面から対応する教育者がいれば…。