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デスク記事

2012/08/29

 1983年、当時の中曽根総理が韓国を公式訪問。冷え切っていた日韓関係を、全斗煥大統領と話し合った。共同声明で相互に緊密な協力関係を維持していくこと≠第一に、竹島を緊急の課題とせず、未来志向こそ必要とした▼1978年、中国のケ小平副総理は来日した際、尖閣諸島について「この問題に触れないのが中国人の知恵。十年棚上げして、後の人の知恵にまかせよう」と語った。最も大切なのは両国の友好。尖閣問題で両国の関係を悪化させることなく、大局に立ったのである▼今回の竹島、尖閣諸島の領有問題は、戦後の日本の最大の危機である。中国、韓国が全ての面で力をつけてきた近年、今後も両国の主張は厳しさを増すだろう。日本が「不退転で領土を守る」のは当然としても、相手の出方によっては、軍事衝突に発展する可能性もある▼それだけは避けなければならない。中国も韓国も、勿論日本も、決して最悪のシナリオを望んではいない。しかし引くに引けない事態になり、結果不幸な結果を招くこともある。今、最も求められているのは、事態を鎮静化させる国家の知恵であろう▼ケ小平は「十年後の人の知恵に…」と言ったが、きっと十年後も、それ以降も同じ≠ニ思っていただろう。国家の知恵とは、無理を通さないことで、決定的な対立を避けることではないだろうか。ナショナリズムを背景に、あるいは「正義は我にあり」と、あくまで領有権を主張すれば出口を失い、悔いを千載に残すことになるだろう。中曽根氏、ケ小平氏の知恵が思い出される。