デスク記事
「これ誰だか分かる?」「ホラ、すぐそこに住んでいた人だ」「小、中学生の時、よく遊んだよ、みんなで」…。久しぶりに花園町に住む幼友達を訪ねた。彼が見せてくれる数枚の写真には白髪の人、笑顔のご婦人、どっしり落ち着いた紳士などが写っていた▼すぐ分かる写真は一枚もなかった。考えてみれば五十数年前の人たちだ。当時一緒に遊んだ悪ガキ数人を思い浮かべてみても、写真の人物と直結する人はいなかった。「当時の拓銀の支店長の息子で…」と、そこまでヒントを与えられ、誰なのか分かった。彼の立派な家に上り込んで、遠慮なく遊んだりした。しかし写真には面影はなく、半世紀以上の年月の流れは、すっかり彼の表情を変えていた▼「こっちが分からない分、俺たちの写真を見せても、相手もきっと分からないんだろうな」と、友は言う。そして「彼から手紙が来た。ホラ読んでみな」と見せてくれた。そこには11月までには紋別に行く。懐かしい思い出に会いにゆくために≠ニ書かれていた▼遠い記憶が蘇(よみがえ)ってきた。当時は花園町7区という、駅の裏手に当たる場所だ。周辺に子供たちが多かった。常に遊び声が満ち、夕飯時刻が過ぎて暗くなっても、真っ黒になって遊んでいた。走り回り、声をからして叫び合っていた▼不思議なものだ。五十余年の遠い年月は写真の友の顔を忘れさせているけれど、一緒に遊んだ光景は昨日の事のように鮮明に蘇ってくる。「あいつはどうしてる?」「知らないなあ」「お姉さんがいたろ、お転婆の」…。話はとどまることなく進む。少年のように心が弾んだ。