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デスク記事

2012/09/13

 東京のホテルで、チェックアウトするため部屋を出た。向こうからルームキーパーさん(客が使った後の部屋を、清掃したりベッドメーキングをする人)と廊下で出会った。彼女は私に向かって笑顔で「おはようございます。お出かけですか」と挨拶してくれた。私も「おはようございます。お仕事ご苦労様」と応えた▼ここまではいつもの形。時にはスレ違っても朝の挨拶をしてくれない方もいるが、こっちから声をかければ、大抵は返してくれる。挨拶は礼儀でもあるし、互いに心地良い気持ちにしてくれる。朝は一日のスタートだから、挨拶一つで心が爽やかになる▼その方は、少し違っていた。歩みを止めて、私をまっすぐ見て「ありがとうございます」と、頭を下げ、笑顔で言ってくれた。私は「挨拶、丁寧ですねえ、こっちこそ良い気分になれますよ」と言うと、さらに表情をほころばせ「そう言っていただいて嬉しいです」と。また頭を下げる▼私は少し質問したくなった。「そのありがとう≠ヘ、このホテルを使ったお礼ですか?」と言うと、彼女は「ハイ、それもありますがお仕事ご苦労様≠ニ言われたのは初めて。ドキッとしました」と言う。まだ若い方だったが、彼女がどのような気持ちで仕事をしているか知りたくなり「この仕事で心がけていることは何ですか?」と尋ねた▼「ハイ、お客様が気持ち良く、快適に過ごして頂けますよう、私が宿泊する身になって部屋を整えることです」と言う。私は、彼女は真のプロだと思った。仕事に意義と喜びを抱き、全力で仕事に打ち込んでいる姿…。美しいと思った。