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都会に住む蛙(かえる)と田舎に住む蛙が、それぞれ違うマチを見たいと思い、分岐点である峠まで来た。都会の蛙が田舎はどんな所かと腰を伸ばして眺めると、何のことはない、そこには自分の住む所と全く同じ景色があった▼蛙の目は後ろについているため、自分が今来た方角を見ていたのである。ここから「蛙の行列」という日本の諺(ことわざ)が生まれた。自分のことが分からず、ただがむしゃらに進み、結局は失敗することの例えである▼文部科学省がいじめ防止の総合対策を発表。同省が主導していじめ、自殺者を出さないよう正面から向き合い、積極的に関わってゆく≠アとになった。そのため外部専門家チームの派遣、相談員の増加などを予算化する▼子どもたちからの相談を受けるカウンセラーを増員したり、教職員の研修を強化、いじめ相談ダイヤル番号の周知徹底など、さまざまな対策を行うという。はてな?と首を傾げる。これら対策は決して目新しいことでなく、学校で、地域で、地元教育委員会などで今までもやってきた。それを文科省から遠隔操作で行うというもの▼いじめや、いたましい自殺問題について、一番真剣に、深刻に対応してきたのは教育現場であり、地元の人たちだ。それでも、千差万別の、微妙な子供たちの心には目の届かない部分も多い。それでも目を届かせようと必死になっているのが現場であり、近所のおじさん、おばさん、家庭だ。文科省はやがて、立ち上がった蛙のように何も新鮮な対応が出来ないまま、文科省の建物に帰る自分に気付くのではないか。