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交通事故による全国の死者は年々減少し、統計上5千人を割るようになった。しかし一瞬の出来事でかけがえのない命を落とす痛ましい事故は、周囲を不幸のどん底に落とす。しかし、これより遥(はる)かに多いのが自殺者。交通事故の6〜7倍にもなり、14年連続で3万人を超え、その数は増える傾向にある▼過ぎ去った9月は「自殺防止月間」。内閣府自殺対策推進協議会が年齢別の意識調査をしたところ、男性は「社会制度や慣行が多くの人を自殺に追いやっている」と答え、女性は「全ての人にとって、身近に存在する問題」と答えている。残念ながら、自殺はすぐそばにある問題のようだ▼金融関係の仕事をしていて、社会的に責任ある立場の方が数年前、こんなことを語ってくれた。彼は札幌勤務時代、ひとつの悩みを抱えていた。不況による地域企業の業績不振について、日々考えることが多く、ある日7階の自室から外を見た▼「地面がグングン近づいてきて、やがてすぐ目の前に地面がセリ上がってきました。手を伸ばせば触れるくらいに近く、窓からトンと飛び降りれば外の空気が吸えると思った。窓枠に足をかけようとした時、部屋に入ってくる職員が居て、それでハッと我に返りました。勿論、地面は遥か下にあり、身震いしたものです」▼彼は自殺しようと思った訳ではない。深い考え事をしていただけだ。孤独がいつの間にか、彼を闇に誘(いざな)った。彼は言う。「人は、誰もが自分の知らない弱さを持っています。今の社会は、その弱さにしつこく迫ってくる怖さを持っているようです」と。