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デスク記事

2012/10/13

 台湾出身の日本人(2009年国籍取得)金美齢さんの講演を北見市で聞いた。「困難、大変な事から逃げるな。この世は不条理なことばかり。しかしそれに打ち勝つのは、自分の力でしかない。困難こそ人を強くする」と力説した。そして「凛とした日本を作ろう」と日本大好き人間の笑顔を見せた▼翌日札幌に出た際、何年か振りで大通公園に行った。温かい太陽と、名物とうきびの香りが漂ってきた。散歩しているうちに、9丁目公園で有島武郎の文学碑に出くわした。その碑には「小さき者よ、不幸な、そして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて、人の世の旅に登れ。前途は遠い、そして暗い。しかし恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。行け、勇んで。小さき者よ」と刻まれている▼「カインの末裔」「或る女」などで知られる大正時代を代表する文学者・有島武郎は、結婚後7年で妻を病気で失い、3人の子供が残された。碑文の文章は、子供たちへのメッセージである。しかし頑張れ≠ニか明るく生きろ≠ニは言わず「人生は暗い」と言い、そして勇んで生きろ≠ニ言っている▼金美齢さんの講演と有島武郎の碑文が、私の中で妙に重なった。金氏は言う。「今の子供たちは、親に何でもしてもらって厳しさを知らない。自らの努力で人生を切り開いてゆく力強さがない。それは親の責任」と話した。今後、世界はさらに厳しさを増すだろう。「小さき者」がそれに立ち向かい、克服して行くために、親たちも一皮むけなければならない│と、2人の言葉は教えている。