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デスク記事

2012/10/21

 「ウソも方便」とは、仏さまが全ての生き物を救うため、やむを得ず使うウソ│という意味。それならウソも必要な手段だと、誰もが理解するだろう。真実を告げることが相手を傷つけることもある。ウソも真実も、場面によって使い分ける必要があるだろう▼野田首相が政治生命をかけて取り組んだ「社会保障と税の一体改革」。それを通すため、谷垣前自民党総裁と確約したのが「近いうち解散」。その約束が守られるかどうかー事実上の最終会談となった19日の安倍自民党総裁、山口公明党代表との話し合いは不調に終わった▼8月8日の党首会談で交わされた約束≠ヘ、何よりも重い。「近いうち解散」は、少なくとも年内│というのが、当初からの一般的な解釈であろう。野田首相はそれを反故(ほご)にした。しかも国会のスムースな運営なくして緊急の課題である「特例公債法案」の成立はない。地方自治体、国民の生活に重大な影響を与えながら、選挙を遅らせたい民主党の内部事情を優先させている▼ここでの「ウソも方便」は当てはまらない。全てを救うためではなく、全てを混乱させる最悪のウソだからである。ここに至っても解散時期を明確にせず、その前の野党の協力こそ解散の条件とした。野田首相の思考回路を疑わざるを得ない。自・公が拒否するのも当然であろう▼これまでの経過で、流れは早期解散に向かっている。現状不適合な手法で流れを遅らせれば、水はさらに淀(よど)み、国民はドロ水を飲む。政治家は何のために国政を志したのか。頭を冷やし原点に立ち返るべきだろう。