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デスク記事

2012/10/27

 作家・三島由紀夫氏が憲法改正のため、自衛隊市ヶ谷駐屯地を訪れ、自衛隊の決起(クーデター)を促しバルコニーに立って演説、割腹自殺をしたのが1970年11月25日だった。彼は常々自分はファシストではない。国を守る自衛隊の位置づけを明確にし、確固たる国軍にすべきなのだ>と言っていた▼その主張と行動の良し悪しの判断は、個々それぞれ異なるだろうが、当時私は20歳代。三島氏の文章のキラキラ輝くような美しさに魅了された1人だった。それだけに45歳の衝撃的な死に、しばし呆然とし、同時に三島氏らしい結末だとも思った。今の時代、これ程骨っぽい人物は少ない。理屈を言い批判はするが、実行せず、結果を見てあれこれ言う。火中の栗を拾う人を横目で見て勝手な批判をするばかりだ▼80歳の石原慎太郎氏が25日、東京都知事を辞職した。緊急記者会見を開き、新党を結成し、次期衆議選に比例区で立候補することを発表した。「若者よ、何してる」と叫び、「硬直した中央官僚の支配体制を変える。これが国への最後のご奉公」と語った▼その表情は溌剌(はつらつ)としていた。機に応じ素早く決断し、実行に移す。その力強い実践力は、今の日本人に欠けている部分であろう。世界は、全ての面で歴史的な曲がり角に来ている。その中で日本もまた崖っぷちにいる。この難局にあっても、政治は停滞し、国民から離れ、しかも硬直化している。どこかに風穴を開けなければ、何も変わって行かない。石原氏の国政宣言が、三島氏事件と同じ25日に行われたことに、何か因縁を感じる。