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デスク記事

2012/11/18

 横道議長の「衆議院を解散する」の声が議場に響き渡った。それは、長い間の国会の喧噪(けんそう)と、選挙戦後の政治とを、キッパリ分ける一声。議場を支配した瞬間の静寂は今まで≠ニこれから≠フ明快な区切りだった。決められない政治、党利党略、混乱の中の自己保身、国民不在の意味不明の論議、それによる政治離れ…。情緒的な表現を借りれば、政治を取り巻く全てのことが、解散の声と共に一気に地平線の彼方に消え去った▼彼らは何を論議し、何を争って来たのか。法案成立と解散とを取引材料にし、約束とか、うそつきとか、国会に似つかわしくない言葉が飛び交った。しかし、世界、アジア情勢、東日本大震災、原発事故など、国全体が揺れ、国家が手に余る難題を抱えながらも、日本の政治は右往左往し、大局に立たず身の周辺しか見えなかった▼雨後の竹の子より、もっと次々発生する新政党は、国の不安定の証明だ。そして無理な理屈を正当化し、当面の選挙目当ての結集。大同団結などという品の良いものではなく、溺れそうになりながら、必死に藁(わら)を掴むが如き姿。政治に真っ直ぐ向かう余裕なんかない▼そうは言っても、選挙区に散ってゆく後姿に、一抹の哀愁が漂う。衆議院議員と言えば、以前はもっと重みが有った。今、国民から尊敬もされず、非難の対象になっている多くの議員を見るにつけ、それでも自分こそ求められている議員≠ニ信じて疑わない様子に、何故か同情心すら覚える。「みんな帰って来いよ」と言いたいけれど、「資質ある者のみ集まれ」と望むのが本音だ。