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デスク記事

2012/12/18

 作家・藤沢周平(平成9年1月死去)は「周平独言」の中で、政治と大衆と題して、次の文章を残してる。「政治はかくあるべきと考えることは、ある意味では容易なことである。考えるだけなら素人にも出来るという意味である。しかしそれを現実の場に活かすことは決して容易なことではあるまい」と▼2009年夏の衆院選で民主党は歴史的勝利を得た。それから約3年3か月後、つまり今回の衆議選で自民党が圧勝し、民主党は惨敗した。自民に対し、あれほど強烈にノー≠つきつけた国民が、その熱も覚めやらぬ間に、また自民党に政権を戻した。かくも早々と国民の気持ちが変わることに、この国家にある種の軽さを感じる▼藤原氏の文章を今回の選挙結果に照らせば、大衆の要求と、それを受ける政治との間には大きな乖離(かいり)があり、政治も大衆も、それぞれの立場では、それを埋めることが出来ず、特に大衆は、結果が得られないことに大きな失望感を持つ▼この繰り返しでは国家の行く末は危うい。地に足が着いた歩みが出来なければ、未来を追うことは出来ない。それは何故なのか。大きな原因は、最も基本となる「国家の長期ビジョン」がないからではないだろうか▼世界は歴史的な曲がり角に来ている。人類の行く末を鳥の目で見て、その中の日本の道を定める時期に入っている。原発問題も、社会保障も、経済も、日本の総合デザインの中で位置づけし、粛々と進めてゆくべきであろう。今は、先を見て確信を持って進むべき道を設計すべきではないか。