デスク記事
アゴヒゲアザラシが東京と神奈川の県境を流れる多摩川に現れ、付けられた名前は「タマちゃん」。あの騒動から10年が過ぎた。荒川など所を変え周辺の川に姿を現わし、大きな話題になった。その時発足したのが「タマちゃんを見守る会」。今でも野生動物を観察するなど活動を続けている▼その見守る会がこのほど10周年を記念して「祝う会」を開いた。会の本拠地は横浜の神奈川県民センター。約70人の会員が、それぞれ好みの写真を持ち寄り、中にはタマちゃんを等身大に引き延ばした写真も飾られた▼タマちゃんが現れた時、自然発生的に発足した「タマちゃんを見守る会」は今でも月例会を開き、近況報告をしたり、自然を被写体にした写真を持ち寄り、話に花を咲かせている。タマちゃんの故郷・オホーツクに興味を持ち、紋別の国際シンポジウムにも数回参加している▼会長の田中保男さん(82)は「みんな自然が好きで、タマちゃんのお蔭で友達になり、心豊かな生活を送っています。仲間で一緒に山に出かけたり、珍しい鳥が現れれば声をかけあい撮影に出かけたりしています」と楽しそうだ▼仲間とはぐれ、いつの間にか大都会まで泳いだタマちゃんは、1年8カ月後にみんなの前から姿を消した。横浜市西区役所がタマちゃんに住民票を与え市民≠ノするエピソードなどの話題もあった▼都会の人を癒した一頭のアザラシ。会の一人の婦人は「初めて目が合った時、涙が止まらなかった。それまでの鬱(うつ)が一瞬に治ったの」と話す。タマちゃんは今頃、どこで生きているのだろう。