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大リーグのイチロー選手がヤンキースと新たに2年契約を結んだ。より多額の契約金を提示する他の2球団を断わり、ヤンキースに残留した理由がイチロー選手らしい。「アメリカに来て理想としていたものがここにある。ここでしか味わえないものが確実に存在する」▼2001年、大リーグで日本人選手初の首位打者になり、小泉内閣から国民栄誉賞の打診があった時「光栄だが、まだ発展途上。もし賞をいただけるなら、現役を引退した時に」と断わり、2004年、大リーグ記録となる262安打を達成し、再度国民栄誉賞の話があった時も「今の段階で国家から表彰されると、モチベーションが下がる」と再度辞退している▼野球に全てを注ぎ、大リーグ13年目を迎えるイチローの悲願は、ワールドシリーズの制覇。それを目指すチームは、イチローの中ではヤンキースしかなかった。しかし2年間で成績を残さなければ退団に直結する。しかも右打者外野手の補強もありうるヤンキースで、生き残る厳しさを知っているのもイチローだ▼安住を求めず、自分を崖っぷちに立たせ、モチベーションを高めながら夢を追うイチローは、このチームに移籍した直後のことを「すごく孤独になる時間が多かった」と語っている。孤独や緊張の中に身を置かなければ得られない野球人としての目標は、決して金銭に換えられない▼人生で、何かを達成するための最大の課題は、自分がそれに向かう環境の中に在るかないか、気持ちを高揚させる場所にいるかどうかではないだろうか。全ての人にとっても…。