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デスク記事

2013/01/24

 車で札幌に向かう途中、室内に一匹のハエが現れた。窓を開けて外に出そうとしたが、なかなか出てくれない。そのうち見失ってしまい「もう出たかな」と思っていたが、途中で目の前を横切り、時には運転している手にとまる。その都度気になり、運転に集中できない▼ハエ一匹のせいで、車を止めて全てのドアを開けて、大規模な追い出し作戦を行った。そして遂に、後部座席周辺から外に飛び去ってゆくハエを確認した。ホッとするものである。ようやく落ち着いて運転に集中できる▼フッと湧き上がってきた思い。それは紋別を根拠地にして生きて来たハエがこの寒空、見知らぬ上川の山中の環境に、すぐ馴染むことが出来るだろうか≠ニいう疑問である。考えてみれば、たった一匹で、見知らぬ土地で寂しくないのか▼食べ物の場所をどうやって探すのだろう。今までなら、どこに行けばエサがあるか、感覚的に察知していただろうに、こんな山の中では途方に暮れるのではないだろうか。そんな思いが頭に中でグルグルまわった▼いつもなら、ハエ叩きでやっつける相手だが、一緒にドライブした相手となれば、少しは情が湧くのかもしれない。もちろんハエ一匹、どうって事はないかも知れないが、誰もがそんな気持ちになる時もあるのではないか▼人間だって、故郷から離れれば寂しさを感じ、去ってきた場所、人を思い浮かべる。ハエにそんな感情があるとは思えないが、エサのない山の中で放つより、もっとマチの中で出してやれば良かった│とも思った。そんな思いはおかしいだろうか。