デスク記事
「ローソク出せ、出せよ。出さなきゃ、ひっかくぞ」と、子供達が叫びながら、家々を回った風習が、数十年前までは北海道を中心にあった。年配の方なら覚えている人も多いだろう。七夕、またはお盆の時、子供達は数人がひと組になって、賑やかに家々を回ったものだ▼子供だから、ローソクが目当てではない。玄関が開いて「元気だねえ、いいねえニコニコして」などと、そこの家の人がお菓子やアメを渡してくれた。当時は、おやつなどあまり貰えなかった時代だから、子供達は大喜びで分け合ったものだ。夏の日の夕方、そんな声がマチ角に流れた。温かな思い出である▼アメリカの子供達にとって「ハローウイン」は心待ちにしている行事。家々をまわってお菓子や、色々なプレゼントを貰う。北海道の「ローソクもらい」に似ている。その米国南部のサウスカロライナ州で惨事が起きた。ハローウインの習慣でお菓子をもらいに近所の家を訪ねた少年が、ドア越しに銃を乱射され、死亡した。16年前、日本人学生がハローウインの日に、近所の家を訪れ、銃で射殺された記憶が蘇る▼アメリカについて、豊かで明るいイメージを持つ人は多いだろう。しかし、実際は非常に緊張した日常を送っている。プライバシーを守ることに関しては特別に厳しく、日本の良き風習である長屋付き合い≠ネどとはほど遠い。だからうっかり知らない人の庭に入るなどしたら、途端に大きな声で「そこに止まれ」と注意される▼私がロサンゼルスの知人宅に滞在したとき、トナリの広い庭が美しく「見てみたい」と知人に言った時「勝手に行ってはダメ。私が電話してあげるから」と止められた。その時思った。アメリカ人は常に自分のテリトリーを、緊張しながら守っているのだと。