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古代ギリシャに「パンクラチオン」という競技が発生した。打撃と組み技を組み合わせた格闘技で、敗者は死を覚悟しなければならない激しい競技だった。それが7世紀から古代オリンピックに採用され、誰でも参加できる安全な競技になった。現在のレスリングのルーツである▼レスリングは人類最古のスポーツとして知られ、人類の歴史と共に現在に伝えられ、第1回アテネ大会から近代オリンピックの主要種目となった。オリンピック種目の中で、道具を使わない数少ない種目の一つ。格闘技の原点とも言うべき競技である▼国際オリンピック委員会の理事会で、2020年のオリンピックから、レスリングを除外する案が浮上してきた。現在実施されている競技は全て継続してもらいたいが、種目を削減するにしても、人類最古のスポーツで、オリンピックの原点でもあるレスリングだけは残すべきであろう▼理事会が除外の理由に挙げたのは人気度、国際性、男女の比率だという。それでは、レスリングが他の種目と、人気度などでそれだけ劣っているのか、そんな統計的なことは示されていない。理事会という重要な決定機関が、このような理解不能の理由でレスリングを除外しようとするなら、オリンピック本来の意味が薄れていくだろう▼オリンピック種目を決めるときは、広い視野を持ちたい。人類の歴史とスポーツの関わり、人類の営みなど、多角的な見方が必要だ。それより何より、オリンピックとは何か、何故聖火の儀式をギリシャのオリンピアで行うのか。オリンピックが世界最高峰のスポーツだけに、熟慮するのは必要な事だ。