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土曜日朝のテレビ番組「サワコの朝」を毎週楽しみに見ている。9日は登山家・野口健氏が出演し、清掃登山の話をしていた。彼は7大陸の最高峰の登山を成功させた、世界で最年少の登山家。そして、エベレスト、マナスル、富士山などのゴミを集める清掃登山者としても知られている▼彼は少年の頃、父親に「世の中にはA面、B面とがあり、A面は社会の表面、B面は自分が努力しないと、それが見えない。お前はB面の人間になれ」と言われた。野口氏は、山のごみ拾いもB面の活動と言う。「富士山の樹海は、心ない人のゴミ捨て場になっている。そこに行かなければ発見できない現実だ」▼A、B面と聞いて、すぐ理解できる人は年齢の高い人に多いだろう。反面、それが何か、分からない人もいるのではないか。今のようにCDが普及する前は、音楽はレコードで聞いた。ドーナツ盤と言われる小さなレコードには、表と裏に1曲ずつ収録され、表をA面、裏をB面という▼一般的にA面は主体となる曲、B面は、それに準じるおまけ%Iな意味合いもあった。しかし現在はCDの普及で、レコードを見かける事は少なくなった。そしてCDには表しかない。1曲目をA面、2曲目をB面と言う人もいるそうだが、面が同じでは実感がない▼今の時代、色々な現象、場面で、いわゆるB面に味わいがあるように思われる。伝統的な日本文化、受け継がれる生活様式、人間関係。それらB面の息継ぎこそ、日本に深さを与えてくれる気がする。レコードを反転させて聴く手間も、何かを教えてくれる。