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デスク記事

2013/03/27

 アラスカに定住し、主に野生動物など自然を撮影した写真家・星野道夫さん(故人)が、10代の時抱いた感覚について「東京で満員電車に揺られ、学校に通う途中、今この瞬間、北海道ではヒグマが原野を歩いているのか…」と、エッセイ集で語っている。この一文「悠久の自然」が、市内中学校で使われる国語の教科書に載っている▼星野さんは紋別でも講演したことがあったが、その時も「人間にとっての自然には、日常の身の回りの自然と、日々の暮らしに関わらない遥か遠い自然とがある。しかし時間はどこにいても平等に流れているのだ」と言っていた。そして「遥か遠くに在る自然は、私たちに想像力という豊かさを与えてくれる」と話していた▼例年より多い雪、人命を奪う激しい吹雪、そして車の事故など、北海道はまだ冬の中にある。同時進行で、本州では真夏日に迫る日もあり、桜前線も例年より早めに北上。東京は満開を迎えている。舞い上がる雪の中で満開の桜の光景を想像すると、自然の営みの不思議さを感じながらも平等に流れる時間をも感じる▼そんな北海道・オホーツクにも春の気配が感じられる。道路沿いに高く積もった雪は確実に低くなってきて、頑固だったアスファルトの氷も消え始め、乾いた場所も目立ってきた。陽の光にも優しさが感じられ「春遠からじ」の実感がする▼20日の春分の日は「これから春に向かいますよ」と告げてくれる国民の祝日。自然と生命をいつくしみ、豊かな心を育む日である。その春分の日も過ぎ、寒さもゆるやかになって来た昨今。平等な時間は、確実に桜前線を運んで来てくれるだろう。